OUGI Leathers

2022/05/21 14:19

製作方法について

手縫いとミシンについて

OUGI Leathersでは、製作には手縫いの技法を用いています。


手縫いの特徴

手縫いは、1本の糸の両端に針をつけて、左右から交差させながら縫っていく方法です。
縫い目ごとに糸を締めていくことで、しっかりと固定され、糸が切れても全体がほつれにくい構造になります。

強度が高く、特に長く使うことを前提とした製品に適しています。
その分、縫い上げには時間がかかるため、どうしても製作コストは上がります。


ミシン縫いの特徴

ミシンは、上下の糸をループ状に絡ませながら連続して縫う構造です。
スピーディーで均一に縫えるため、効率的な製作が可能で、価格を抑えた製品づくりにも適しています。

ただし、構造上、糸が一部切れてしまうと、そこから縫い目がほどけてしまうことがあります。
耐久性という点では、手縫いに比べてやや劣る場合があります。


写真に写っている道具について

写真左から順に:

  • 菱目打ち

  • 手縫い用の蝋(自作)

  • 縫い針

  • 手縫い糸(天然繊維)

  • 手縫い糸(特殊繊維)

  • 手縫いとミシンの内部構造サンプル

  • 手縫いとミシンの見分けサンプル

となっています。


手縫いとミシンの縫い方の違い

手縫いの手順

まず、菱目打ちで縫い穴をあけます。穴の位置や角度が揃っているかどうかで、仕上がりの印象や強度にも影響するため、丁寧な下準備が欠かせません。

その後、蜜蝋を染み込ませた糸の両端に針をつけ、左右から交差させるように、ひと針ひと針手で締めながら縫い進めていきます。


ミシン縫いの手順

ミシンでは、上糸と下糸をセットし、針を上下させながら革を送っていきます。
上糸と下糸が機械の中でループ状に絡み合い、縫い目が自動的に作られていく仕組みです。


手縫いの特長

糸に蝋を染み込ませているため、縫っているときの摩擦が少なくなり、糸の傷みが抑えられます。
さらに、左右から交差して締めていく構造により、糸がしっかりと革に密着し、ほつれにくくなっています。

万が一、糸の一部が切れても、ミシンのように縫い目全体がほどけてしまうことはほとんどありません。


このように、手縫いとミシンでは構造や仕上がりだけでなく、強度や表情にも違いがあります。
OUGI Leathersでは、ひと針ごとに気を配りながら、長く使えるものを目指して仕立てています。

これは、手縫いとミシン、それぞれの縫い方で仕立てた場合に内部構造がどう違うかを比べるためのサンプルです。
左が手縫い、右がミシンで縫ったものです。

手縫いでは、糸に蝋を染み込ませ、両端の針で交差させながら縫っていきます。
縫い目の中で糸同士が摩擦で固定されるため、しっかり締まり、簡単には抜けにくい構造になります。

一方ミシンは、上下の糸をループ状に絡めて縫う仕組みのため、途中で糸が切れてしまうと、その部分からスルスルとほつれてしまうことがあります。
また、ミシンの構造上、糸に蝋を染み込ませることはできません。


とはいえ、手縫いだから必ず丈夫、ミシンだから必ず脆いというわけではありません。
製作者の習熟度や理解、そして製品への気配りによって、仕上がりや耐久性には大きな差が出てきます。
縫い目の美しさについても同様で、手縫い・ミシンいずれも、つくり手次第です。


世の中にはさまざまな製品があります。
だからこそ、お客様ご自身が「どんな素材や工程で作られているか」「どんな人が作っているか」に目を向け、少しずつ良いものを見分ける感覚を育てていただければと思います。



手縫いとミシンの見分け方

手縫いとミシンの見分け方

製品の表面を見たときに、縫い目の右側が少し下がっているように見える場合は手縫い右側がわずかに上がっているように見える場合はミシン縫いであることが多いです。
(※使用している針や穴の開け方、縫い方の違いによって例外もあります)

また、ミシンは針が自動的に貫通するため、縫い穴は非常に小さく揃っているのが特徴です。
一方、手縫いでは菱目打ちや菱切りなどを使ってあらかじめ穴を開けるため、縫い穴がやや大きめで菱形の形が見えやすくなっています。

製品によっては意図的に縫い目を目立たせていないこともありますが、縫製の違いを知ることで、モノ選びの基準が少し増えるかもしれません。


コバ処理について

コバとは、革の断面部分を指します。
仕上げの方法によってかかる手間も変わり、手縫いと同様に、丁寧に処理すればするほど製作に時間がかかり、その分価格にも影響します。


なぜコバ処理が必要か

布の場合、端は折って縫い込んだり、ロックミシンで処理したりして、ほつれを防ぎます。
革は繊維が絡み合っているため、すぐにほつれることはありませんが、時間が経つと少しずつ繊維が緩んできて、黒ずみや傷みの原因になります。

特にタンニン鞣しの革は「可塑性(力を加えて変形させると、その形のまま保たれる性質)」があるため、水分や油分を含ませて磨き圧縮することで、繊維を締めてほつれにくくすることができます


基本のコバ処理

コバ処理の基本は、以下の流れです:

  1. コバの凹凸を取り除き、整える

  2. 水や処理剤を塗布

  3. 繊維を磨き圧縮して滑らかにする

  4. 必要に応じてワックスや薬剤で表面を覆う

これにより、見た目の美しさと耐久性を両立することができます


使用しているコバ処理剤

写真左から:

  • トコノール

  • ふのり(天然糊)

  • 自作のコバワックス


コバ処理の種類(タンニン鞣し革)

■ 自作のコバワックス仕上げ(最上級仕上げ)

  • 熱したコテでワックスを溶かしながら、コバに塗り込んでいく方法です。

  • 革の可塑性を活かしながら磨き圧縮し、最終的にコバをしっかりとコーティングします。

  • 汚れや摩耗に強く、最も艶と耐久性に優れた処理です。

  • 特別な製作時に使用し、もっとも時間がかかります。

■ トコノールなど市販の処理剤による仕上げ(標準的)

  • 複数回に分けて塗り込みながら磨き、繊維を固めて仕上げます。

  • 凹凸を取り、自然な艶を持たせつつ、適度な強度と美しさが得られます。

  • 一般的によく使われている方法です。

■ ふのり仕上げ(自然素材仕上げ)

  • ふのりは、海藻から作られる天然の糊です。

  • 溶かして塗り込みながら磨くことで、繊維を自然な形で固めます。

  • 強度はやや劣りますが、風合いや自然さを活かした仕上がりになります。


コバ処理の強度比較(目安)

自作ワックス処理
> トコノール処理
> ふのり処理
> 未処理

処理の手間とともに、仕上がりの強度・艶・耐久性にも差が出てきます。


クロム鞣し革のコバ処理

クロム鞣しの革は、タンニン鞣しと異なり可塑性がないため、通常の磨き圧縮だけでは繊維を締めることができません

OUGI Leathersでは、以下のような工程でコバ処理を行っています:

  1. 目止め液を染み込ませて繊維を固める

  2. 表面を削って凹凸を整える作業を繰り返す

  3. 最後に自作のコバワックスを塗布し、表面を保護する

この方法は手間も時間もかかりますが、柔らかい革でも美しく、耐久性のあるコバに仕上げることができます

またこの処理方法は、タンニン鞣しの革にも応用可能であり、
OUGI Leathersで採用している「■ 自作のコバワックス仕上げ(最上級仕上げ)」と同等の工程と仕上がりを持つ、高度なコバ処理です。

※なお、表面だけを薬剤で覆う簡易的な処理方法(ひび割れや剥がれが起こりやすいもの)は採用していません。


コバ未処理をご希望の場合

デメリットをご了承いただいたうえで、既存製品のコバをあえて未処理のまま仕立てることも可能です。
ご希望があれば、ご注文時にご相談ください。