OUGI Leathers

2022/05/06 16:31


革製品の良し悪しについて、私の考えと、製作するときに意識していることを書いてみます。

どれだけ製品の説明に良い事が書かれていても、こんな感じで作られていたらまずいな…というようなポイントです。


手縫いのサンプルを作ってみました。




表面は特に差がありません。どちらも綺麗に縫えています。

この2つの違いは、、、裏返してみるとわかります。




裏返してみました。

どちらも大きなパーツと小さなパーツを縫い合わせています。

財布や名刺入れなどのポケット部分は、このように大きなパーツに小さなパーツを縫い合わせて作ることがほとんどです。

写真下部の革が2枚になっている部分をポケットだと思って見てください。


この2つの違いは、ずばり2枚の革の境目部分の縫い穴の位置です。

青いサンプルは、境目と小さいパーツ側の縫い穴が近い位置にありますが、

赤いサンプルは境目と小さいパーツ側の縫い穴が遠い位置にあります。

さて、どちらの方が丈夫な縫い方でしょうか???



正解は、赤いサンプルの方が丈夫な縫い方です。

ポケットは物の出し入れの時に縫い目に力が加わるため、正しい縫い合わせ方をしないと力が加わったときに革が破れやすくなってしまいます。

青いサンプルはポケットの境目と小さいパーツ側の縫い穴が近い位置にあるため、ポケットを広げようとして縫い目に力が加わると、小さいパーツの革が破れる可能性が高くなってしまいます。




このように、ポケットを広げようと力を加えると、糸に引っ張られて小さいパーツの縫い穴が広がります。

穴の位置が境目に近いので、繰り返し縫い穴を広げると革がちぎれてしまいます。

赤いサンプルも見てみましょう。




このように、縫い穴が境目から遠い位置にあるので、縫い目に力が加わることで多少縫い穴が広がってしまっても、

そう簡単にはちぎれません。

こちらの方が丈夫な縫い方と言えます。


負担のかかりやすい部分を意識せずに単純に縫い穴を開けてしまうと、青いサンプルのように弱くなってしまいます。

赤いサンプルのようにちょうど良い場所にピンポイントで縫い穴を開けるためには、縫い穴の間隔調整をする必要があります。

当然手間もかかりますが、少しでも丈夫に長く使っていただける製品を作りたいという想いで、

OUGI Leathersの手縫い製品は負担のかかりやすい部分は縫い穴の位置を調整して、丈夫にするための工夫をしています。



製品の一例の名刺入れです。

力が加わりやすい部分の穴の位置が調整されています。


このように、ぱっと見が似たような製品であっても、よく見ると使う方を思いやった工夫がされている製品とそうでない製品があります。

デザインが気に入っても即決せず、細かな部分までチェックしてみてはいかがでしょうか。